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【小説】犯罪者。僕の夢見た小さな家族。

2020/01/28

盲目の老婆がなぜ毎日あの場所に立ち続けるか知ってるかい?

 

 

洗濯物が良く乾くようなとても晴れた気持ちよい日に、自分の過去の重圧に耐え切れず、そしてこれからの未来を逃げるため僕は銀行強盗をした。

人を3人殺した。理由なんてない。

 

とりあえず4000万。車で逃走するとき、窓の外に1000万ほど捨てた。理由なんてない。

ただ愉快犯としてどうマスコミに取り上げられるか楽しみだったからだ。僕の人生は終わっていた。

ただ捕まるのではおもしろくない。最後に何か、何かを残したかった。もういいんだ。最後にすべてを無にしてやる。

どこまで逃げてきたのだろう、場所はわからなかった。車でテレビを見るとニュースはどこのチャンネルも僕がおこした事件で持ちきりだ。僕の顔もついに全国デビューだ。

 

人気がない田舎道に車をとめると、一人の老婆が杖をつきながら僕の方に近づいてきた。

やばい、ばれたか。でももうどうでもいいんだ。いいんだもう、なんだったら殺して逃げてやる。

 

しかし老婆は視点の合わない瞳で大きな空をみあげながら細いしゃがれた声でこうつぶやいた。

「どなたかいらっしゃるのか?」

 

どうやらこの老婆目が見えないらしい、僕の顔が見えないことは好都合だった。

物心がついた時はすでに孤児院で育った僕には家族がいなかった。もしも僕にお母さんがいたなら調度この老婆と同じくらいになるのだろうか。

そんな事を思っていたら、よせばいいのに

 

「どうしたんですか?」

 

自然とその老婆に話しかけてしまっている自分がいた。

事情を聞くとこの老婆もまた幼い頃から身寄りなく、そして目も見えないという。
今日はすこし風邪気味で医者に薬をもらいに行くところだというのだ。

僕は車にあった市販の風邪薬を老婆に渡してその場を去ろうとした。

 

「寄って行ってくださいな。お礼に家でご飯でもご馳走しますよ。」

 

人と一緒に食べるご飯。何年ぶりだろうか。孤児院をでてから僕はもう何年も一人っきりでご飯を食べていた。
こんな小さなことだけど、この老婆の優しさ、そして見たことのない触れたことのない自分のお母さんとその老婆を照らし合わせてしまっている僕がいた。

 

僕は家族がほしかった。孤独を感じることが嫌だった。母の愛情に触れたかった。

老婆はとても優しかった。ご飯を食べながら僕も孤児院で育って身寄りがいないことを老婆に伝えた。

僕のために泣いてくれた。老婆はこういった

 

「こうして二人でご飯をたべていると親子みたいだねぇ。うれしいよ。」

 

老婆の家は洗濯物が山のように積まれてあった。床は汚れていた。薄暗い部屋だった。

老婆の身の回りのことをすべてやり終えて僕はその場をたちさろうとしたとき、テレビで僕のニュースが写真つきで流れた。

老婆はそのニュースを聞きながらこう言った。

 

「どうしてこんなことしてしまうんだろうねぇ。このニュースの子もどんな事情があるのか知らないけど、真面目に生きていれば、必ずいいことがあるのにねぇ。」

 

「え?」 僕は聞き返してしまった。

 

「わたしはつらい過去もあったけど、ずっと前をむいて真面目に生きたよ。そしたらこんないいことがあったよ。現に今、ほら?あなたというこんな素敵な青年に出会えたじゃない。」

 

僕の瞳から涙があふれポタポタと床に落ちた。掃除した床がまた汚れてしまうほど泣いた。

 

 

次の日、僕は自首をした。

自首をした時嘘をついた事がひとつある。僕は残りの3000万は燃やしたと嘘をついたが、海外の腕のいい目医者にまかせて、あの老婆へ光をプレゼントしたのだ。

 

光をとりもどした老婆は報道される犯罪者の顔をみて何を思ったかな。

免許証を老婆の家に忘れてきたのは僕のさびしい過去とお母さんへの甘えかな。

 

 

あれからどれくらい日にちがたったのだろう。冷たい鉄格子の中で最後にすごしたひと時の家族を思い出していた。

母さん、目が見えるからこれからは洗濯も床の掃除も楽ちんだよね。

 

 

明日は僕の死刑の日だ。

 

 

彼は知らなかった、光をとりもどし真実を知った老婆は泣いて泣いて明日がきても泣いて、欲しかった視力を涙の海で消すほど泣いて。
自ら光をまた絶ったことを。

 

しかし老婆は毎日毎日待っていた。彼と老婆が最初に出会ったあの田舎道で。

 

 

 

盲目の老婆がなぜ毎日あの場所に立ち続けるか知ってるかい?

 

それはね、切ない犯罪者の顔を知らずに生きようとして、家族をまっているからだよ。

 

 

 

 

《あとがき》・・・最近の世の中、無差別殺人やネグレストなど、信じられないような物騒な事件が多い。犯罪者にもそれぞれの過去があるだろう。
しかしいくらつらい過去があったとして絶対に人を殺めてはいけないし、自ら命をたっても絶対にいけない。一番の被害者は傷つけられた人。
考えて欲しい、一人一人に大切な人生があることを。
常に一人一人が相手の気持ちを考えて思いやりをもって接してほしい。優しい気持ちを大事にしてもらいたい。

その昔、私が高校1年の時に書いた短編小説が実家の引き出しから見つかったので記事にしました。

記事更新 森田

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